以前に修復修理を致しました 1970年代ビクター4CHセパレートステレオ「DF-11」ですが、
広島市のお客様から「レコードプレーヤーが回転しない」ご連絡を頂きました.。
しかし、点検してみますと、33/45回転ともそのような症状は出ませんでした。
時々テストしても大丈夫でした。
ところが、遂に症状が露呈しました。




↑ 順番に点検をおこなって行きます。


↑ サーボモーター関連に電圧が掛かっていません。
スタートスイッチの不具合のようです。

↑ 33回転/45回転の切り替えボタンを切り替えていて45回転の場合は回OKです。
33回転スイッチ機構又はマイクロスイッチの動作が不完全の様子です。

↑ 33/45回転切り替え押しボタン機構の動作が不確実の様子です。
可動部分に潤滑剤を塗布してすりあわせを行いスムーズな動作を取り戻しました。

↑ 黒いマイクロスイッチ3個は異常ないようです。
機構の可動接触部の緩慢な動作が影響していたようです。


↑ キャビネットにセットしてエージングテストを行っております。
テストの結果、確実スムーズに動作を続けています。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理はキャビネットに組み込
みが完了してエージングテストに入っておりました。
しかし、レコードプレーヤーに異常事態発生です!
レコードのオート演奏中に発生した不具合はレコード演奏中に曲の終端でオートリターン動作が
出来なくなりました。
リターンレバーの操作ではリターンしますがオートではリターンしない状態です。
組み込み前までのエージングテスト中には発生しなかった不具合が最後に発生しました。
このように完成間際の事例は今まで何回も経験しています。
半世紀前のレトロ製品にはパーツの「経年劣化.」による不具合が潜んでいます。
表面上に現れている問題は解決可能ですが、潜在的な「不具合の巣」のようなものがあり
通電使用状態によりその「不具合の巣」が目を覚まして表面化してしまいます。

↑ 完成直前での不具合発生は残念な気がする反面、良かった気がします。
納品後の場合は大変です。
このPIONEER S-88のオートプレーヤーはピックアップ゛アームのコントロール機構は専用の
小型モーターで制御スイッチを切り替えています。
この制御スイッチはプリント基板形式の接点をローターの回転で切り替えています。


↑ 制御スイッチを分解してみますと プリント基板形式の接触面が熔けています。

↑ スイッチ基板を清掃して熔けた面を修復しました。

↑ ローターの接点も磨耗しています。 接触片も一部熔けて短くなっています。
組み立てて動作テストを行いましたが、改善されません。
スイッチローターの接触片も熔けて短くなってうまくかみ合わないため駄目なようです。
最後の望みを掛けて手持ちストックの同型プレーヤーの部品取りを行い完全修復に向かいます。

↑ 同型のストック品です。


↑ アームコントロールメカは構成は少し違いますが、動作は同様の為このまま使用します。

↑ アームが不良の為、アームとカートリッジシェルは取り外して移植いたします。


↑ ピックアップアームの移植はかなり複雑ですが、無事完了いたしました。


↑ 各部の調整を終えてテスト中の様子です。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理波キャビネット関係の
補修が終わりシャーシー/レコードプレーヤーの組み込みを行います。


↑ センターキャビネットにシャーシー/レコードプレーヤーの組み込みを行いました。
そして簡易FMアンテナを300Ωフィダー線を加工してキャビネット後部にセットしました。
外部FMアンテナなしで受信可能になりました。


↑ 見事な3点セットの様子です。



↑ ダイヤル照明の様子です。
↑ センターキャビネットは、3点セパレートの平均サイズより横幅が5cmmほど大きくなります。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理は予定通りに進みます。
スピーカーエンクロージャーの修復を行います。
ご依頼者様からご提供のスピーカーエンクロージャーの後板は吉野杉の12mm厚の無垢板です。
早速加工して交換作業に入ります。

↑ スピーカーエンクロージャーの後板等のダメージは「パーチクルボード」の経年劣化
により崩れています。

↑ 取り外して吸音テックスを外しますと、円形の低音補強材が貼り付けられていました.。
これを外しますと更にパーチクルボードがバラバラに崩壊してしまいました。


↑ 外した円形の補強板を中心部に貼り付けます。

↑ そして、先ほど外しておいた吸音テックスを大型のホッチキスで取り付けます。


↑ スピーカーケーブルを取り付けます。


↑ 取り付け前に白木ではバランスがよくないのでウレタンニスを2回塗りしておきました。

↑ ビス止めをして完成です。

↑ スペーサーも外れてなくなっている箇所を修復しておきます。
次へ進みます。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理でシャーシー/レコード
プレーヤーはエージング中で、その間にキャビネット周りの経年劣化によるダメージの補修を始め
ます。

↑ 先ずセンターキャビネットの袴の部分の合板の剝離の接着補修と後板のパーチクルボード
の経年劣化による崩れた部分の交換行います。

↑ 木工ボンドを間隙に塗布して圧着して行きます。




↑ 四辺のベニヤ板の剝離を入念に補修します。

↑ 後部のパーチクルボードは12mmの厚手のベニヤ板に交換をいたします。
別途スピーカーエンクロージャーの後部板交換時、同時に行います。

↑ この部分はセンターキャビネットの後部の為スピーカーの陰に隠れて見えない箇所ですが、
樹脂製の補修材で埋めておきます。




↑ 3芯のスピーカーケーブルは中途で切断して簡易接続、テーピングがなされていました。
多分、別のスピーカーを接続するために切断したようです。
このままでは、非情に不安定で、接触不良やショート、断線の心配がありますので、
一旦切り離して再接続半田付けして、テーピングはやめて絶縁スリーブを装着いたしました。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理は順調に進行しています。

↑ PIONEER Sシリーズのマルチアンプ対応のスピーカーケーブルは3芯のためSPプラグも
3Pの変わった形をしておりますので、別のスピーカーを使用したくても接続が出来ません。
汎用の色々なスピーカーを接続できるようにリアスピーカー端子のみ汎用のスピーカー接続端子
を増設いたします。


↑ シャーシー後部の遮蔽板に汎用SP端子を取り付け中の様子です。
補強桟を接着しています。



↑ 配線の様子です。


↑ フロントSPプラグを接続した様子です。

↑ 汎用のスピーカー接続端子増設完成画像です。


↑ パイロットランプソケットが劣化してショートしたため交換修理を行います。

↑ パイロットランプ電源の保護ヒューズも断線の為交換を行いました。


↑ パイロットランプソケットの交換を行いました。

↑ エージングテスト中の様子です。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理はレコードプレーヤーの
全体クリーニングとオートメカの点検、カートリッジの点検音出しなど総メンテナンスを行います。

↑ ゴムマットは最後に手入いたします。
ターンテーブルボード/ピックアップアームなどのクリーニングを行いました。



↑ ターンテーブルを外してクリーニングを行いました。


↑ テーブルボードの上面のメカのクリーニング点検注油を行います。

↑ テーブルボードの裏面のオートメカとフォノモーターなどの様子です。


↑ フルオートコントロールメカの可動部のクリーニングと注油を行います。

↑ 上面の注油口からフォノモーターに注油を行います。

↑ 注油チューブを通ってフォノモーターの軸受けに潤滑油が送られます。

↑ 特殊な形状のフォノモーターの3箇所の防振ゴムは硬くはなっていますが、
致命的な経年劣化がなくこのままの使用が可能です。


↑ ピックアップアーム関連の点検とクリーニングを行いました。




↑ カートリッジシェル・カートリッジ・ダイヤモンド針などの点検を行いました。
特に接触部の4つのピンのクリーニングを入念に。




↑ 45回転EPも問題なく動作OKです。
1970年代PIONEERマルチアンプセパレートステレオ「S-88」の修復修理はメインアンプ基板に
重要な問題を抱えており、これを解決なしでは、まともな音出しが不可能な状態です。
しかし原因は把握しているため、修復に必要なンパーツを準備しておりました。
そしてトランジスタと抵抗器などの代替パーツが揃いましたので本格的に修復作業に入ります。
現状は片ch低音アンプに不具合があり低音が再生されません。
左右のバランスも不調です。
パワートランジスタの異常高温により回路ヒューズが断線します。動作不能になります。
基板内に潜在的な不具合が各所にあります。


↑ この20cm×17cmのメインアンプ基板にこのステレオの命が掛かっております。
フロント低音アンプ+フロント中高音アンプ+リア低音アンプ+リア中高音アンプと4つのアンプ
が搭載されていてます。
修復には一部のトランジスタを除き、殆ど全てのトランジスタの交換を行います。

↑ 大出力のパワートランジスタ日立2SD234は現在入手不可能の為
代替として性能の最適な日立2SC1061を8個使用いたします。

↑ 日立2SC984は同等のトランジスタが8個用意できました。

↑ 日立2SA565は同等のトランジスタが4個用意できました。

↑ 0.5Ω3Wセメントモールド抵抗8個です。
↑ パワートランジスタ2SC1061の交換取り付けに必要なプラスチックビスです。

↑ 0.5Ω3Wセメントモールド抵抗8個の交換を行いました。
次にヒートシンクに取り付けられたパワートランジスタを外しにかかります。
劣化したプラスチックビスは脆くなり頭が折れてヒートシンクに残ったビスを取り除くのは難しい
作業になります。
一般の家電製品は基板内のトランジスタ・IC・コンデンサー・抵抗などの交換はしないで
不良基板の交換を行い完了になります。
しかし、半世紀以上前の製品は、そのような事は出来ませんから緻密で困難な取り外しと
取り付けの作業を行います。

↑ パワートランジスタ2SC1061合計8個を取り付けます。
ヒートシンクに絶縁シートのマイカシートを挿入してプラスチックビスで固定してトランジスタの
足を基板のパターンに半田付けを行います。

↑ 2SC984合計8個と2SA565合計4個の交換を行います。

↑ 基板裏面の様子です。
今回はなるべく基板のパターンにダメージを与えないで交換の方法をとりました。


↑ シャーシーの全体像です.




↑ 交換パーツ群です。


↑ 交換完了後のテストの様子です。
非常に良好です。 仮修理のプレーヤーも接続してエージングテストの様子です。
一山越えた感じで、難関を突破しました。 今後の作業に弾みがつきます。
テストレコードの音を聴いて癒されています。