
修理でお持ち込みを頂いておりました、1989年代SONY CDステレオ高級ラジカセミュージックリファレンス・スペシャル「D-2010」です。
当時198,000円の高音質の最高級卓上ラジカセです。 AM/FM/カセット/CDのオールインワンのラジカセのような製品です。
マホガニー調ピアノ塗装の豪華な筐体です。 その音質は大型高級ステレオに匹敵いたします。

↑ 前面の様子です。 CDが動作いたしません。 AM/FMはOKです。

↑ 背面の様子です。


↑ CDをセットします。

↑ PLAYボタンを押しますが、回転いたしません。
何回も強く押している内に何とか回転しましたがすぐに停止します。

↑CDを認識(読み取り)しないため再生できません。

↑ レンズ汚れがたまにありますのでクリーニングしましたがやはり読み取り不良です。

↑ 上面メカ部分を取り外して点検を行います。

↑ この機器の故障順位の上位になるCDドライブの劣化による動作不良です。
CDプレーヤードライブ単体の修理は不可能な構造になっています。




↑ 「CDドライブ」の交換は正常動作の「D-2010」を入手して部品を取り外して移植修理を行います。
部品どり用に準備したD-2010から正常動作の「CDドライブ」を取り外して移植修理を行います。
しかし、両者を詳しく総合判定して良い方を優先いたします。

↑ 左 修理依頼「D-2010」 ×CDドライブ ×カセット 〇AM 〇FM △セレクター 〇ボリューム ×上扉
右 部品取用「D-2010」 〇CDドライブ ×カセット 〇AM 〇FM 〇セレクター 〇ボリューム 〇上扉
結論 右部品取用「D-2010」を採用いたしました。


↑CD再生テストの様子です。


↑ エージングテスト中の様子です。






↑ 前面サランネットを取り付けました。
完成です。 エージングテストを続行いたします。

1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」の修復修理は完成後更にフォノモーターの回転振動
ノイズを減少させる為の「低反発をフォーム」を使用して改良を行い、長時間エージングテストは順調でした。
丸一日経ちまして、梱包準備の前にLPレコードをかけて、「インバーターノイズ」と「モーター振動ノイズ」の両ノイズの
無い音に満足し、続いて45回EPレコードを乗せて45回転でスタートさせますが、33回転で回っています。??
そんな筈がないのに」と思い、ターンテーブルを外して調べますと、モータースピにドルにベルトが掛っていません。
33回転の位置のまゝです。

↑ 45回転に切り替えてもモータースピンドル33回転の位置にベルトが掛っています。

↑ モータースピンドルが規定値より下がっています。
モータースピンドルの取り付けネジをゆるめてモータースピンドルを上に移動させようとしますが、限界で不可能です。
下がった原因はモーターが規定位置より下がったことになります。
これはモータ重量で「低反発フォーム」が圧縮されたためです。
「低反発素材」は温度により柔らかくなる性質があります。 長時間の回転でモーターの温度が60℃近くになります。
そしてゴムのように反発力はありません。その為「低反発フォーム」が圧縮されて厚みが薄くなったようす。

↑ ある程度圧縮したままで取付方法を改良いたしました。
接触面を広くする意味で大きな平ワッシャーを使用いたしました。



↑ 取り付けボルトの締め付け具合も柔らかくいたします。

↑ 調整しながらテストを繰り返し最良の状態にしていきます。

↑ 全長32cmのアームは通常27~29cmより長いためプレーヤーボートからの振動を受けやすくなります。
しかし、思いきった対策によりモーター振動は改善いたしました。

1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」の修復修理は完成いたしました。
ヘルツフリー化は正弦波インバーター電源の組み込みによるパルス性高調波のノイズを想定した対策が功を
奏してノイズの発生が予想以下の低雑音に満足いたしました。
低音域最大で音量中以上(大音量)でカートリッジから拾っているフォノモーター振動音の方が目立っています。
普通はここまでボリュームアップをして聞くことはありませんが、やはり気になります。
当初のあの状態からここまでパフォーマンスを高めてここで妥協するのは残念です。
「よし、ダメもとでも、最善を尽くそう」と決心の作業をはじめました。


↑ 最初、劣化した防振ゴムを交換いたしました。


↑ 防振ゴム交換後は飛躍的にノイズが減少いたしました。
ここまでは完成までの状況です。
更に進化させるには「防振素材」を過去に使用した実績のない「高性能な素材」を使用する必要があります。
脳裏をよぎったのは「低反発素材」です。
低反発フォームは、特殊な分子構造で 衝撃吸収材としてシリコンやポリプロピレンを原料にした低反発素材です。
私は従来からゴムにこだわっていました。そして円形のグロメット様のもで低反発素材はありませんでした。
4年前に大型HCでゴムパーツを物色中に見つけた低反発素材「ピタフォーム」を購入しておりましたが使用する事
はありませんでした。
ここで、救世主になるとは・・・・・早速その効果の確認作業を開始いたしました。

↑ 低反発素材「ピタフォーム」は厚さ6mmのシート状ですので、適当な大きさにカットして2枚重ねで使用
いたします。

↑ 取り付け方法も素材の性質を生かせた方法に変更いたします。

↑ 先に使用したグロメットは一部使用いたします。


↑ テストの結果は、期待通り低反発素材の素晴らしさを実感いたしました。
半世紀以上前は夢の夢でした素晴らしい素材です。

1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」の修復修理VOL8工程は、「正弦波インバーター電源装置」を
センターキャビネットに格納いたしました。

↑ 完成画像です。





↑ 「スイッチング電源」と「正弦波インバーター電源」に固定金具を手作りして取り付けます。

↑ 「スイッチング電源」と「正弦波インバーター電源」を格納して接続を完了いたしました。


↑ 「スイッチング電源」と「正弦波インバーター電源」の最大の敵は動作時に発せられるパルス性の
「高調波によるインバーターノイズ」です。
増幅度の高い「フォノ入力回路」に「ジーッ」とノイズが入ります。
しかし、取り付け位置や回路構成を研究の結果、最もノイズの少ない方法で取り付けを行いました。
(プレーヤーを回転させたままでAMラジオの受信はインバーターノイズで使用出来ません)



↑ 低音を最大にした時にフォノモーターの回転振動を針先からカートリッジに伝わるノイズを
極力減少させる為にターンテーブルゴムマットの下に振動フィルターを挿入いたしました。

↑ 当時の操作パネルのダイヤルスケールのバックライトが暗いのは仕方がないと思います。
6.3Vの豆電球3個では無理があったようです。
その後ビクターやパイオニアは4ch時代は12Vのヒューズ型特殊パイロットランプを6~7個使用して華やかさを
競い合ってきました。

波乱万丈の難関を突破して完成に漕ぎつけました。
「不可能は排除」と自身に檄をかけて「SANSUI APS-1200」は蘇りました。
この製品の印象は保存環境が影響して自然な経年劣化のダメージがありました。
しかし、内部を詳しく観察いたしますと、使用感が少なく感じました。
過去の故障修理の痕跡も認められません。
最近の家電製品のように「短寿命使い捨て」ではなくビンテージオーディオは家電文化財的な
優れた製品です。
只、懸念されるのが、半導体や回路部品の潜在的なトラブルが浮上してくるかもしれません。
レトロオーディオ等は修復修理を行って新品状態に復活したのではありませんが、
今後の使用がエージングになり性能が定着してまいります。

1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」のお見積もりの為の修復修理VOL7工程は、
レコードプレーヤーは60Hz対応ですが、ご使用地域が50Hz地域のため急遽「正弦波インバーター電源装置」を
構築導入いたします。
このまま使用しますとレコードの回転数が約12%遅くなります。


↑ インバーター電源装置の漏洩ノイズが少ない位置をイメージしておきます。


↑ APS-1200のフォノモーターは「4極ヒステリシス・シンクロナスモーターを使用されています。
配線の変更を慎重に行います。 (元画像)

↑ 配線変更後の画像です。

↑ モータースイッチから発生するスパーク軽減用コンデンサーです。

↑ 1Aのプレーヤー専用電源ヒューズを増設しておきます。



簡単に動作説明をいたします。
商用電源の60Hz又は50HzAC100Vを「スイッチング電源」に入力してDC12Vを生成します。
DC12Vの直流電源を「正弦波インバーター電源」に入力して60HzAC100Vを生成してモーターを回転させます。
チューナーアンプはコンセントの50HzAC100Vを使用しています。
「正弦波インバーター電源装置は」出力が50/60Hz切換付が絶対条件です。(既存のモーターに合わせるため)
組み込み前に.テストを行います。





↑ 簡易ストロボで回転数のチェックを行います。 ピッタリです。





↑ テストは良好です。
スタート時とストップ時に「正弦波インバーター電源」から「ピッ」と発信音が鳴ります。



↑ 45回転EPレコードのテストも正常です。



↑ 59.89Hzで安定しています。

↑ 商用電源は59.94Hzでした。
次はキャビネットに組み込みいたします。

1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」のお見積もりの為の修復修理VOL6工程はセンター
キャビネットとスピーカーエンクロージャーの全体クリーニングを行い、シャーシーとレコードプレーヤーの組み込み
を行います。
アンプとレコードプレーヤーはキャビネットにマウントにより状態が変化する場合があります。
非常に緊張する工程になります。


↑ キャビネットとスピーカーエンクロージャーの外観全体の半世紀以上の汚れを時間をかけて丁寧にクリーニ
ングを行いました。
洗剤などを使用しのますと地肌の塗装面を痛めますので、なるべく使用いたしません。
そして、小傷や色抜けしたヶ所を修正して目立ちにくくいたしました。
仕上げに少量の特殊ワックスで磨き上げました。


組み込みテストを開始いたしました。
スプリットテストでは、あまり気にならなかった現象が強く出てきました。
それは、フォノモーターの回転振動がカートリッジの針先に伝わりスピーカーからブーンとノイズが大きく出る
問題です。
キャビネットにマウント後は箱型のキャビネットに共鳴してさらに大きくブーンとノイズが出ます。
通常の音量ではかき消されますが、無音域では不快に音になります。
対策を行います。
↓ VOL3工程での防振ゴム交換前画像

↑ フォノモーターの回転音と回転振動が大きいのは、防振ゴムでモーター振動をプレーヤーボードに伝わり
にくくする構造になっています。
しかし、その防振ゴムが劣化しているため、効果がなくなっています。
その結果、回転振動が針先にもろに伝わりスピーカーからブーンとノイズが大きく出てきます。
劣化して硬くなった防振ゴムを交換いたします。
↓ 防振ゴムを交換後の画像です。

ここまではVOL3工程の一部を転記いたしました。
前回に交換した箇所をもう一度見直しましたが、変化はありません。
フォノモーターの交換は不可能です。
色々対策を考えましたが最終的にフォノモーターの「マウント構造を改良」することにいたします。

↑ 元は真鍮製パイプにボルトを通していますが、
替わりに弾力の強いゴムチューブを使用してこの部分で振動を吸収する方法をとることにいたします。

↑ 改良を行いテストを実行いたします。

↑ 成功です。 大音量でも大丈夫です。
もう一つ問題があります。
これはごく稀にカートリッジのR/Lの出力が途切れたり、音量が変化したりしておりましたが、解決しておかなけれ
ばならない問題でした。
ラジオの場合は同じ症状はありません。


↑↓ これはカートリッジの接続ピンと接続線の接触不良を修復して解決いたしました。



↑ プレーヤーの問題は全て解決いたしました。








↑ 下扉のストッパーが錆びていましたので磨いておきましたが、メッキが剥げています。

↑ 前面の上扉は左側スライドに不具合がありますが、修理は不可能です。
下に収納したままでよいと思います。



↑ SANSUI エンブレムと赤いパイロットランプが嬉しそうに見えます。

↑ このステレオAPS-1200はスピーカーケーブルをFMアンテナとして利用していますので、
FM放送が受信が不安定な時はスピーカーケーブルを延ばしたり角度を変えたりしますと受信が
良くなる場合があります。

1955年代ナショナルHiFi MAGIC SUPERラジオ「UF-770」の修復修理の記録です。
昭和30年代初期の製品ですので60数年以上前の製品です。

↑ サイズ W540 H325 D210mm
頑丈な木製キャビネットで前面の一部が樹脂製です。


↑ 内部シャーシーは経年劣化が酷く、初期テストを行いますが電源が入りません。
電源が入らない原因は、特殊回路のため「リモートスイッチアダプター」が欠品しているため通電できない構造
が判明いたしました。

↑ 配線の外被の劣化が限界に達しています。

↑ 電源ヒューズホルダーも錆びて朽ち果てて通電不可能状態です。


↑ パイロットランプ用配線は外被の変質硬化のため亀裂によりショートが懸念されます。




↑ 「リモートスイッチアダプター」が欠品のため直結処理を行い強制的に電源投入を行いました。
しかし、真空管ヒーター回路とパイロット回路は通電しましたが、動作はいたしません。
B電源回路が動作していないようです。(リモートスイッチに関連あり)


↑ スイッチ接点がかなり劣化しています。


↑ 画像上部の2×5=10個の小さなコイル群はロータリースイッチ選局用の放送局5局の周波数を固定し
てスイッチで選局するもので、当時は画期的なものでした。
しかし、現在ではこれが仇になっています。
元通りになったとしても現地で各放送局の周波数に合わせて調整が必要になりります。

↑ 基本のバリコンによる選局に改良する方法が無難かと考えますと、全体的な改造が必要になります。

予てよりお預かりいたしまして大変お待ち頂いておりました。
1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」のお見積もりの為の修復修理VOL5工程は
レコードプレーヤーの全体のクリーニングを行いました。
レコードプレーヤーは精巧な機器です。
しかも、経年劣化のダメージを最も受けやすいデリケートな機器です。
そして、「ステレオの顔」です。 きれいにしてやりたいと思います。






↑ カートリッジヘッドシェルとトーンアームのクリーニングも行います。
分厚いアルミダイキャストのターンテーブルは普通よりもかなり重く作られています。
これは重いほど回転中の「ワウ・フラッター」(回転ムラ)が少なく安定した回転が維持されます。
この重量ターンテーブルを回すために大型のフォノモーターが使用されています。
ゴムマットから露出した部分の表面が劣化変色して見苦しくなっていますので、細かいサンドペーパーに洗剤を
つけて丹念に研磨いたしました。↓



↑ ゴムマットは洗剤でブラシ洗いを行いました。

↑ 飾りのリングもきれいになりました。



↑ カートリッジヘッドシェルとトーンアームもこんなにきれいになりました。


↑ プレーヤーボードのクリーニングを最後に行いました。

↑ ゴムベルトを架けながらターンテーブルをセットいたします。


↑ 完了いたしました。

↑ ゴムマットの縞目が照明や角度により変化します。
肉眼ではこんなに変化がないのですが、微妙です。
次工程でシャーシーとレコードプレーヤーをキャビネットに組み込んでみます。
組み込みによエージングテストを行うことにより、今まで出なかったトラブルが発見できます。

予てよりお預かりいたしまして大変お待ち頂いておりました。
1969年サンスイソリッドステートセパレートステレオ「APS-1200」のお見積もりの為の修復修理VOL4工程は
シャーシーの経年劣化による錆の補修を行いました。


↑ シャーシーの錆はこのままでも機能的には問題はありませんが、今後のことを考えますとこの機会に補修
しておくことが重要と考えました。
全塗装は不可能ですので、錆の酷い箇所を塗装いたします。

シャーシーは0.5mm程の鉄板にメッキを施してありますので普通は錆びろことはありません。
私の経験では過去にビクターの真空管ステレオで鼠が巣つくり排泄物で錆びて腐蝕しているのがありました。
修復修理の記録はブログ内検索「SSL-96」でご覧いただけます。
● 錆びた部分の清掃を行いシルバー色ラッカーの塗装を行いました。


↑ 2回塗りを完了いたしました。

↑ 表面の塗装が完了いたしました。

↑ 裏面の一部の塗装をしています。 後部の一部が残っていますが、最後に塗り上げます。

↑ エージングテスト中の様子です。



次工程でレコードプレーヤーの全体的なクリーニングを行います。